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御剣堂、桟橋。
「卒、業」
ぼそっと呟いて水面に目を落とす。傍らの籠の中、遊ぶためだけに集めた石を、取るでもなく取り、投げるでもなく投げた。少し離れたところに飛んでいった石は、白蓮の気を示すかのように、撥ねずにぼとりと水中に落ちていく。
波紋の広がる水面を見つめる。衝撃が加われば、すぐに静けさの乱される水面。風に吹かれて波紋が立つ。見つめる目には力がない。目を向けているだけ、そういう感じ。
冬になった今となっては虫の声もない。場を満たすのは静寂、いや沈黙だろうか。白蓮は膝を抱えて蹲り、己の中のそれを無視しようとする。だがすればするほど、それは心の中に満ちていく。潮のように。
「・・・気づかなかったな・・・後、2ヶ月・・・」
永遠にこの楽しい日々が続くのだと錯覚していた。本当に、そう思い込んでいた。卒業後のことを知らされ、夢から覚めた。いい夢だっただけに、受けたショックは大きい。
また、石を取った。だが投げる気力もなく、上げかけた腕は桟橋に落ちる。石が転がった。
(皆・・・来てくれる、よな)
もちろんそれはわかる。だが信じていたいだけかもしれない。それでも・・・。真実が心の穴を押し広げる。
疑念が晴れない。そんなことはないと、来てくれることはわかっている。現在高3の能力者たちだって、また一緒に話すことが出来る。恐らく変わらないのに――この寂しさはなんだ? 泣きたくなるくらい寂しいのはなんでだ?
頭を膝の間に埋めると、濃紫の髪の房が桟橋に落ちた。
「・・・・・・戻るか。寒いし・・・・・・」
その声には、いつもの覇気がなかった。
鋏に如雨露!? ロー○ン!?
この疑惑が頭から離れない。・・・てか投げ枕って。
――だけど、心は一つだったんだ。
彼女は、仲間の呼ぶ声にこたえて部屋を出ようとしたが、ふと儀式を忘れていることに気付く。
承諾の返事ではなく、ちょっと待ってくれと外の仲間に告げてから、大した距離ではないがなんとなく早足で、デスクに戻った。
筆立てにあったクリップすらないシンプルなフォルムの銀のボールペンを取り上げた。目の前にはメモ帳。それを一枚千切り取り、何事か書いた。それはデスクの引き出しにしまわれる。
「ああ、今行く」
催促をする団員たちに声をかけて、彼女は部屋を出た。
”皆で、生きて帰ろう”
汚いが、一生懸命書いたのが読み取れる筆跡で、メモにはこう書いてある。
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(カテゴリ・美術室報告のところに載っているイラストの数々は、株式会社トミーウォーカーの運営する【シルバーレイン】の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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